【カナダ旅行記】 「第4章」10時間耐久寝たふりレース

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第4章」10時間耐久寝たふりレース

中国の空港で6時間待機したあと、

カナダのバンクーバーへ向けて

約10時間のフライトが始まりました。

(今考えてもキツすぎ)



バンクーバー行きの飛行機内でも、

周囲への怯えが収まらない私。


窓側の席だった私は、

搭乗するやいなや荷物を抱えて

寝たふりを開始します。


緊張状態なので全く眠くないんです。


しかしそこは寝たふりで押し切ります。


なぜ寝たふりをするかと言うと、

CAさんなどから話しかけられるのを防止するためです。


話しかけられたら、

なんて答えればいいかわからないからです。


荷物の盗難にあうのも怖いので、

荷物はギュッと抱えたままの寝たふりです。


機内食が配られていても、頑として寝たふり。


トイレには絶対行かずに寝たふり。


隣の席の人がトイレに行ったときだけ寝たふりを休憩。

(一体何と戦ってんだ)



ふと寝たふりをやめた際に、

CAさんが各席を周っているのがわかりました。


CAさんに向けて、

ポツポツと手を挙げる乗客たち。


手を挙げた乗客に手渡される紙。



「あ!あれはたぶん中国で4人組が持ってた紙だ!」



なにもわからないまま、

とりあえず手を挙げ紙をもらう。


紙を見てゾッとしました。


全て英語で書いてあるんです。



「まったくわからん」



これ書かないかんの?

無理じゃない?


早々に記入をあきらめました。


隣の席の人がトイレから帰ってきたし、

しかも記入するペンをもらい忘れたので、

寝たふりを再度開始。


渾身の寝たふりを継続したまま、

無事にバンクーバーの空港に着陸しました。



「ふー到着か…」



荷物や持ち物を整理しながら、降りる準備をします。


10時間耐久寝たふりレースを繰り広げた自分の席を眺め、

(忘れ物チェック)

飛行機をあとにしました。



空港内に入ると、またしてもネクスッの壁です。


まずは先ほど機内でもらった紙に記入するため、

各地にある記入台を探します。


すると、私と同じように

紙に記入している人がいることに気付きました。


こっそりと近づく。



「あわよくば、書き方をカンニングしよう。」



その思いを胸に記入台についた途端、

記入台を離れていく人々。



「んだよっ!」



心の中で叫びます。


救いの手が差し伸べられることもなく、

ただただ時間が過ぎていく…。


さっきまで人でごった返していた周辺も、

今では移民らしき人たちの列が残っているだけ。



「おれはきっとあの列ではない」



なんとなく、

自分が並ぶべき列ではないことは察していました。


焦りと不安が、大きな音を立てながら押し寄せてきます。


すると、突然背後から声がしました。



“Hi, Where are you from?”


ハッキリと聞き取れました。


空港の人らしき女性が、

困ったアピールをする私を見て声をかけてくれたようです。



パニック状態の私は、こう言いました



「ジャパン!…あっジャパンじゃない、チャイニーズ!」

(お前なに言うてんねん状態)


カナダの人に、

めちゃめちゃ日本語で話してしまいました。


どこから来たの?と聞かれて、



「日本、日本、中国」



こんなやつ怪しすぎるだろ。


案の定、女性の顔がスッと曇った気がします。


航空券を取り上げてくる女性。



“Ah…”

と一言


ついてこいとのジェスチャー。


「あっでも紙がまだ…」


この期に及んでそうアピールする私に、

女性は笑いをこらえた様子で、

顔の前で手を振るジェスチャー。


”あれ?これ、いらないのか…?”


そのままカナダ版ネクスッのところへ連れて行かれました。


導かれるままに列に並びます。



『ネクスッ』



私を呼ぶ声がしました。


コワイ顔のネクスッおじさんの前に立ち、パスポートを手渡します。



“What ~~~?”

えっ…


全然わからんのですが?


Whatしか聞き取れてないですが?


Whatだったのかも怪しいですが?



あらかじめ予習していた、

税関で聞かれやすい質問の

どれとも違う質問が飛んできました。


頭が真っ白になりながら、

唯一用意していた回答をぶつけます。



「サイトシーイング」



ここでもカンペキなカタカタ英語で、

渾身の一撃を放った私。


パスポートを返してくれながら、

ネクスッおじさんは鼻で笑いつつ

「どうぞ」のジェスチャー。



私は満面の笑みを浮かべて、

ネクスッおじさんに会釈しながら通り過ぎる。



『ネクスッ』



私の背中からネクスッおじさんの声が聞こえてきました。


おそらく、

全く質問の回答になっていなかったのでしょう。


それでも私をカナダに迎え入れてくれた

カナダ版ネクスッおじさんに感謝です。



背中から聞こえるネクスッに愛を感じました。


これから始まるカナダでの旅を

祝福してくれた気がします。


ありがとうネクスッおじさん。



そうして、やっとの思いで

妻と1年ぶりの再会を果たすことができました。

(↑バンクーバーについて最初に食べたハンバーガー)

5章へつづく…

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